Saturday, June 17, 2017

6.17 。





ぼくはラム酒にくるまった

ぼくはラム酒にくるまった
手をたたき
猫ののどをさすらった
ビン詰めの 月と星が吹き荒れている
ほうき星の道を遠く 流れの詩人が
クルミの実をわっていた
狭い星の風穴の中に
眠らない水の眼が 見つめていた

東の夜 夜の南
夜がしこたま沈んでいる西の海辺を
ぼくは手の中に穴をほり
ありきたりの昨日を うずめていた
紫色のカニたちがいくつも 塩を運んでいた
あり得た今日と思い出深い明日
砂の中にはまた 暖かな手があり
やわらかな草がもえていた
ほの暗く 見えるようで見えない道が
いくすじも走っている

子供らの笑い声が
何もない空にとびはねていた
百合の眼がゆれていた
風の根っこに腰をかけ
やわらかな大地の顔を見た
研ぎすまされた今の中に つづいている
どろんこの花 どろんこの骨
たちこめる汗と霧
沈む太陽と
青い鏡のうずまく中に
夜は細く あてどなく紡いでいた
まわる木枯らしの蟻の眼
まわる木枯らしの馬の眼
ぼくはラム酒にくるまった
手をたたき
猫ののどをさすらった

長沢 ナーガ 哲夫